この章で学ぶこと
会社という組織がどう動き、誰がどんな数字に責任を持ち、何をすると法律に触れるのか——ビジネスパーソンの共通言語の基礎をまとめて押さえる章です。「経営目標を立てる」「組織の形を選ぶ」「決算書を読む」という経営・組織論、不正を防ぐ仕組みであるガバナンス・監査、そして著作権・労働法・個人情報保護など「知らないと事故る」関連法規の3系統で構成します。用語同士がバラバラに見えても、「会社を運営する」「会社を守る」という2つの目的でつながっていることを意識すると覚えやすくなります。
経営・組織論
会社は「目標(経営目標・経営計画・事業計画)」を立て、それを「組織構造」に落とし込み、実行した結果を「決算書」で振り返るというサイクルで動きます。目標達成の手法としてはPDCA(計画→実行→評価→改善)が定番ですが、変化の速い環境では状況把握を起点にするOODAループ(観察→情勢判断→意思決定→行動)も併せて出題されます。両者は「PDCAは改善サイクル、OODAは意思決定の速さが要」という対比で覚えると区別しやすいです。
組織構造は、機能ごとに分ける職能別組織、事業ごとに分ける事業部制組織、両方の指揮系統を持つマトリックス組織の3種が頻出です。人材マネジメントでは、実務を通じて学ぶOJTと研修中心のOff-JTの対比、学び直しを指すリスキリング、多様な人材の活用を掲げるDE&I(Diversity, Equity & Inclusion)が新シラバスで比重を増しています。
会計分野は売上高・粗利益・営業利益という利益の階層と、固定費・変動費を分けて損益がゼロになる売上高を求める損益分岐点の計算が頻出です。財務諸表3点セット(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)はそれぞれ「ある時点の財政状態」「一定期間の儲け」「現金の出入り」を示すという役割の違いを押さえておけば選択肢を絞り込めます。
扱う用語(精選後・26語)
- 経営目標/経営計画/事業計画
- PDCA/OODAループ
- 職能別組織/事業部制組織/マトリックス組織/持株会社
- CxO
- OJT/Off-JT/リスキリング/タレントマネジメント/目標管理制度(MBO)
- DE&I/ウェルビーイング
- 売上高/粗利益/営業利益/固定費/変動費/損益分岐点
- 貸借対照表/損益計算書/キャッシュフロー計算書
- ROE・ROI・自己資本比率(財務指標のグループとして)
ガバナンス・監査
企業が不正やミスなく運営されているかをチェックする仕組みがコーポレートガバナンス(企業統治)です。実務で守るべきルールを守ることがコンプライアンス(法令遵守)で、この2つは「会社の方向性を正しく保つ仕組み」と「個々のルールを守る行動」という関係にあります。
監査は目的別に、財務の正しさを見る会計監査、業務プロセスを見る業務監査、情報システムを見るシステム監査に分かれます。試験で特に狙われるのは「システム監査人は監査対象部門から独立していなければならない」という監査の独立性と客観性の原則と、予備調査→本調査→監査報告書という監査の一連の流れです。内部統制の仕組みとして、業務の中で誤りや不正を防ぐ体制(職務分掌=権限を1人に集中させない仕組み)も頻出します。
扱う用語(精選後・11語)
- コーポレートガバナンス/コンプライアンス
- 職務分掌
- 会計監査/業務監査/システム監査
- システム監査人の権限と責任等
- 監査の独立性と客観性の保持
- 予備調査/本調査/監査報告書
ビジネス関連法規
知的財産権は「何を」「どう」守るかで4種類に分かれます。創作物(プログラムや文章)を守る著作権、発明を守る特許法、デザインを守る意匠法、ロゴ・商品名を守る商標法です。ITパスポートでは特に、ソフトウェアは著作権法で保護される点や、営業秘密を不正に使う行為を取り締まる不正競争防止法(秘密管理性・有用性・非公知性の3要件)が頻出です。
労働関連法規は、残業・休日のルールを定める労働基準法(36協定など)、派遣労働者の働き方を定める労働者派遣法、契約全般を扱う民法(請負契約・準委任契約の違い)が中心です。「請負は成果物の完成に責任を持つ、準委任は業務の遂行そのものに責任を持つ」という対比は、IT開発の外部委託契約でも頻出する論点です。
扱う用語(精選後・15語)
- 著作権/著作権法/特許法/意匠法/商標法
- 不正競争防止法/営業秘密(秘密管理性・有用性・非公知性)
- 労働基準法(36協定,裁量労働制,フレックスタイム制)
- 労働者派遣法(雇用契約,派遣契約,指揮命令,偽装請負)
- 民法(請負契約,準委任契約)
- 外部委託契約/守秘契約(NDA)
- ソフトウェア使用許諾契約(ライセンス契約)
- 特定商取引法
プライバシー関連法規
個人情報保護法が中心です。「生存する個人を識別できる情報」である個人情報のうち、病歴や信条など特に配慮が必要なものを要配慮個人情報、特定の個人を識別できないよう加工したものを匿名加工情報と呼びます。データ利用の同意方式には、事前同意が必要なオプトインと、拒否しない限り同意とみなすオプトアウトがあり、この対比が頻出します。マイナンバー制度、EUのGDPR(一般データ保護規則)も概要レベルで押さえておきます。
扱う用語(精選後・7語)
- 個人情報保護法/個人情報/要配慮個人情報/匿名加工情報
- オプトイン/オプトアウト
- 一般データ保護規則(GDPR)
セキュリティ関連法規
不正アクセスを禁止する不正アクセス禁止法(不正アクセス行為・助長行為の禁止)と、コンピュータウイルスの作成・提供を罪とする不正指令電磁的記録に関する罪(ウイルス作成罪)の2つが中心です。第8章のセキュリティ対策技術とセットで理解すると定着しやすいです。
扱う用語(精選後・3語)
- 不正アクセス行為/不正指令電磁的記録に関する罪(ウイルス作成罪)
- サイバーセキュリティ基本法
AIで学ぶ
ここまでの用語は、ChatGPTやClaudeなどの生成AIに以下のプロンプトを投げかけると、比較表つきでさらに深く掘り下げて学習できます。コピーして使ってみましょう。
あなたはITパスポート試験の講師です。「ビジネスの基礎(経営・組織・法規)」の範囲について、以下の用語を初学者向けに**関連づけながら**説明してください(単体の丸暗記より、用語同士のつながりを理解したほうが記憶に定着しやすく、試験本番で紛らわしい選択肢を見分ける力もつくためです)。用語同士の違いが分かる**比較表**を最後に付けてください。
【経営・組織論】経営目標/経営計画/事業計画、PDCA、OODAループ、職能別組織/事業部制組織/マトリックス組織、CxO、OJT/Off-JT、リスキリング、DE&I、売上高/粗利益/営業利益、固定費/変動費、損益分岐点、貸借対照表/損益計算書/キャッシュフロー計算書
【ガバナンス・監査】コーポレートガバナンス、コンプライアンス、職務分掌、会計監査/業務監査/システム監査、監査の独立性
【ビジネス関連法規】著作権法、特許法、意匠法、商標法、不正競争防止法、労働基準法、労働者派遣法、民法(請負契約・準委任契約)
【プライバシー関連法規】個人情報保護法、要配慮個人情報、匿名加工情報、オプトイン/オプトアウト、GDPR
【セキュリティ関連法規】不正アクセス禁止法、ウイルス作成罪このプロンプトは、役割設定(試験の講師として振る舞わせる)→関連づけの指示(用語を単に列挙させず、つながりで説明させる)→出力形式の指定(比較表で受け取る)という3段構成でできています。コピーして使うだけでなく、この組み立て方を覚えておくと、他の章や他の資格でも自分でプロンプトを作れるようになります。
章末チェック
最後に、この章で学んだ知識をアウトプットして定着させましょう。全問に答えたら「答え合わせ」を押してください。
問1. 変化の速い環境で、まず状況を観察することから始める意思決定サイクルはどれか。
問2. 貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の役割の組み合わせとして正しいものはどれか。
問3. システム監査に関する記述として適切なものはどれか。
問4. 個人情報の利用に関する同意方式のうち、「あらかじめ利用者の同意を得てから」データを利用する方式はどれか。
この章のまとめ
この章では、経営・組織論、ガバナンス・監査、そして著作権・労働法・個人情報保護などの関連法規を通じて、「会社を運営する」「会社を守る」という2つの視点からビジネスの土台を押さえました。
次章では、その会社が市場でどう戦っていくかを考える経営戦略と、ERP・CRMなど戦略を実行に移すためのデジタルツールを学びます。→ 第2章 経営戦略とビジネスモデル・ツール活用