この章で学ぶこと
ここまでの7章で、個々の場面でAIを使う型を練習しました。 最終章では、それを「毎回、自分の思いつきで頼む」から「誰がやっても、一定の品質で回る仕組み」に変える練習をします。
扱う力は、次の4つです。
- 繰り返しの業務を、工程に分け、AIが担う部分と人が判断する部分を分ける
- 毎回使えるように、プロンプトをテンプレートにする
- AIの出力を、別のAIに採点させる(ただし、限界を理解する)
- 職場のAI利用のルール(ガイド)を作る
第1章の5要素(目的・入力・制約・出力形式・検証)は、この章でも土台になります。 素材はすべて架空のものです。 本コースは実務練習用の教材です。AIの出力は必ず人が検証してください。
このユースケースが起きる場面
毎週の報告書づくり、定型の問い合わせ対応、月次の集計。 一度うまくいったAIの使い方も、次のような理由で、続かないことが多くあります。
- 自分だけが、うまいプロンプトを知っている(引き継げない)
- 毎回、頼み方が変わり、出来がばらつく
- 誰がどこまで確認したか、記録が残らない
- 職場の中で、AIに入力してよい情報の基準が、人によって違う
個人のコツを、チームの仕組みにすることが、この章のテーマです。
練習用のサンプルファイル
この章の実例と問1で使う、架空の日報・課長の月間目標・週報のひな形・価格表・見積依頼を、1つのZIPファイルにまとめました。
ch8-sample-files.zip をダウンロード(約6KB)- 必要な人だけ、ダウンロードして使ってください
- ご自身の職場の実際のファイルで練習する場合は、このZIPは必要ありません。その場合は、機密や個人情報を伏せてから使います
- ZIPの中には、説明のREADME.txtと、8つのファイルが入っています
- 本文に、ファイルの抜粋も載せているので、ダウンロードしなくても、流れは追えます
プロンプト設計シート(再掲)
**目的**:誰に・何のために・何を作るか
**入力**:AIに渡す素材は何か(機密は伏せたか)
**制約**:やってはいけないこと・守るルール
**出力形式**:表・箇条書き・文字数など
**検証**:出力が正しいか、何と突き合わせるかこの章では、この5要素を、工程ごとに、1回ずつ設計することになります。 1つのプロンプトで、すべてを頼むのではなく、工程ごとに分けます。
実例:日報から週報を作る仕組み
状況と素材
あなたは営業課の課長(田中)です。部下は、山田・井上・中村・佐藤・鈴木の5人です。 毎週月曜に、部下の日報(週5日分、合計25本)を読み、営業部長に出す週報を作っています。 1回に、約90分かかります。これをAIと一緒に、短く、安定して回したいと考えています。
手元にあるのは、次の3つです(ZIPに入っています)。
- 日報25本
- 課長(あなた)の、月間のPDCA目標
- 週報のひな形
日報には、前日に書いた「本日の目標」と、当日の「実行結果」、経費が書かれています。 金曜の日報には、週の目標(新規訪問3件以上、見積提出1件以上)に対する結果もあります。 この週は、3人が達成、2人が未達成でした。経費の記録がある人は、3人います。
日報の例(中村さんの10/5)です。
【日報】2026-10-05(月) 営業課 中村
■ 本日の目標(前日に記入)
・新規訪問:1件(H社)
・見積提出:0件
■ 本日の実行結果
・新規訪問:0件
・見積提出:0件
・内容:H社の訪問は、先方の都合でキャンセルになった。日程を再調整する。
■ 経費
・なし課長の月間PDCA目標(2026年10月)は、次のとおりです。 週報では、この目標と照らして、達成の状況と遅れを報告します。
| 項目 | 月間の目標 | 週の目安 |
|---|---|---|
| 新規訪問 | 60件 | 15件(1人あたり週3件) |
| 見積提出 | 20件 | 5件(1人あたり週1件) |
| 新規受注 | 6件 | (週の目安は、設定なし) |
| 営業経費 | 50,000円以内 | (週の目安は、設定なし) |
週報では、目標に対する達成の状況、遅れている点、来週の対策案を、部長に報告します。 対策案は、課長が決めます。
悪い進め方とその失敗
毎週、次のように頼んでいたとします。
日報から週報を作って。失敗は、次のとおりです。
- 週ごとに、週報の形式や粒度が変わってしまう
- 件数や経費の合計を、AIが計算して、間違える(日報にない数字が混ざることもある)
- 課長の月間目標が入力に入っていないので、目標との差異を見られない
- 課長が、どこまで確認したのか、記録が残らない
1つの依頼で、「読む・要約する・リスクを拾う・書く」をすべて任せているため、どこで間違えたかも分かりません。
改善した進め方:工程に分ける
| 工程 | 担当 | 入力 | 出力 | 人の確認ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 1. 事実の抽出 | AI | 日報25本 | 担当者ごとの目標・結果・経費の一覧(事実のみ、根拠つき) | 日報と突き合わせ。数字・日付が正しいか |
| 2. 数字の集計 | 人(表計算) | 工程1の一覧 | 訪問・見積・受注・経費の合計 | 合計を、日報の数字と照合 |
| 3. 目標との差異・遅れの候補出し | AI | 工程1の一覧、工程2の合計、課長の月間PDCA目標 | 差異・遅れ(根拠つき)、課長への確認事項 | 本当に上に報告すべきかを判断。対策案は課長が決める |
| 4. 週報のドラフト | AI | 工程1〜3の出力、週報のひな形 | 週報のドラフト | 表現・数字。断定的な予測がないか |
| 5. 承認と提出 | 人 | ドラフト | 完成した週報 | 最終責任は課長 |
ポイントは、2つです。
- 「何を報告するか」の判断(工程3の取捨選択、対策案、工程5)は、人が持つ
- 数字の合計は、AIに任せず、人が表計算で出す(工程2)。AIには、その合計を、入力として渡す
AIに任せるのは、読む・整理する・下書きする作業です。
工程1のプロンプト(テンプレート化)
毎週使えるよう、変わる部分だけを、【】で示します。
あなたは営業課の日報を整理する担当です。以下の日報(5人・週5日分)から、担当者ごとの目標と結果を整理してください。
**目的**
【対象週】の日報から、課長が上長への報告の元にする、担当者ごとの目標と結果の事実を一覧にする。
**制約**
- 日報に書かれている事実のみを使う。日報にない数字・予定・担当者は書かない
- 件数や金額は、日報に書かれている数字をそのまま使う。合計や割合は、自分で計算しない
- 各記述の末尾に、根拠となる日報の日付と担当者名を付ける(例:[10/6 山田])
- 分からない点は「日報に記載なし」と書く
**出力形式**
1. 担当者ごとの表(担当者/日付/目標/結果/経費)
2. 週の目標に対する結果(金曜の記入のとおり、担当者ごとに「達成/未達成」)
3. 日報に書かれている、キャンセル・遅れ・受注などの出来事の一覧(根拠つき)
**日報**
【ここに日報を貼る】工程3のプロンプト(目標との差異)
工程2で、人が表計算で出した合計を、入力に加えます。
あなたは営業課の週報作成を支援する担当です。次の資料を使って、目標との差異と、上長への報告の候補を整理してください。
**入力**
- 日報の整理結果(工程1):【ここに貼る】
- 課長の月間PDCA目標:【ここに貼る】
- 人が表計算で集計した、今週の合計:新規訪問【 】件、見積提出【 】件、新規受注【 】件、営業経費【 】円
**制約**
- 資料に書かれていないことは書かない。理由が日報に書かれていない場合は、「日報に記載なし」と書く
- 合計は、上の「人が集計した今週の合計」を使い、自分で計算し直さない。割合や達成率は、書かない
- 各項目に、根拠(目標のどの項目か、日報の日付と担当者)を付ける
- 対策案は書かない(対策案は課長が決める)。確認が必要な点は、質問の形で挙げる
**出力形式**
1. 目標との対比の表(項目/今週の目標の目安/今週の実績/メモ)
2. 差異・遅れ(根拠つき)
3. 課長に確認したい点実際に試した結果
工程1と工程3を、この素材で、Claude Codeで試しました(出力は、実行のたびに変わります)。
工程1(事実の抽出)- 担当者ごとの表を、日付順に作り、各記述に[10/6 山田]のような根拠を付けた
- 件数や金額は、日報のとおりに書き、合計は計算しなかった(経費についても、「合計は計算していません」と明記した)
- 週の目標に対する結果を、達成は山田・井上・鈴木、未達成は中村(訪問2件)・佐藤(見積0件)と、正しく整理した
- キャンセル2件(中村:H社・K社)、見積の遅れ(佐藤:L社)、受注(鈴木:S社、480,000円)を、根拠つきで抜き出した
次に、人が表計算で、合計を出します(新規訪問15件、見積提出5件、営業経費7,690円。新規受注は1件)。 この数字を、工程3の入力に渡しました。
工程3(目標との差異・遅れの候補出し)- 課の合計は、新規訪問15件・見積提出5件で、週の目安と同じだった。一方で、個人別では、中村(訪問2件)と佐藤(見積0件)が届いていないと、指摘した
- 新規受注と営業経費は、「週の目安は資料になし」と書き、目安を作り話で補わなかった
- 理由が日報にない点(佐藤の価格の確認先など)は、「日報に記載なし」と書いた
- 課長への確認事項を、7つ挙げた(キャンセルの書き方、経費が業務に必要かの判断、対策案は課長が決めるため空欄でよいか、など)
人が確認する点は、次のとおりです。
- 個人別の結果が、金曜の日報の記入と一致しているか
- 合計が、人が出した数字のまま使われているか
- 「日報に記載なし」とされた点を、本人に確認するか
記録の残し方
仕組みにするときは、次の2つを記録しておくと、引き継ぎや改善に役立ちます。
- 使ったプロンプトのバージョン(いつ、何を変えたか)
- AIの出力に対して、人が修正した点(何を直したか)
修正の記録が溜まると、「AIがよく間違える点」が分かり、制約を追加できます。 これが、仕組みが育っていくということです。
設計メモ:なぜこの書き方か
| 要素 | 実例での書き方 | 効いた理由 |
|---|---|---|
| 目的 | 工程ごとに、1つの役割 | 1回の依頼を、小さく、確認しやすくした |
| 入力 | 前工程の出力と、人が集計した数字を、次の入力にする | どの工程で間違えたかが、特定できる |
| 制約 | 「合計は人が出す」「根拠を付ける」「記載なしと書く」 | 第1〜7章で学んだ失敗の防ぎ方を、テンプレートに組み込んだ |
| 出力形式 | 表で固定 | 毎週、同じ形式で出力される |
| 検証 | 工程ごとに、人の確認ポイントを決める | 人が判断する場所が、明確になる |
各章で学んだ制約(補わない、根拠を付ける、要確認と書く)を、テンプレートに組み込むのが、仕組み化の中核です。 一度書けば、毎回思い出さなくて済みます。
練習問題
進め方は全問共通です。
- 素材を読み、プロンプト設計シートの5要素を自分で埋める(AIはまだ使わない)
- 埋めた内容をもとにプロンプトを書き、普段使うAIで実行する
- 出力をルーブリックで自己採点する
- 解説を開き、自分の設計と比べる
問1 業務を工程に分ける
状況:営業事務のあなたは、顧客からの見積依頼への対応を、AIと一緒に効率化したいと考えています。見積依頼は、顧客によって、届き方が違います。
成果物:工程表(工程/担当(AIか人か)/入力/出力/人の確認ポイント)。3工程以上。 発展課題(任意)として、届いた4件の依頼を、統一の形式(品目・数量・希望納期)にそろえる作業を、AIで試します。
素材は、ZIPに入っています。
- price-list.csv:当社の価格表(納品できる商品)
- request-1-email.txt:メール(丁寧で、内容が明確)
- request-2-email.txt:メール(言い方が曖昧)
- request-3-fax.txt:FAXの定型票(「商品名:個数」)
- request-4-phone-memo.txt:電話を受けた社員のメモ(略記)
【現在の業務の流れ】
1. 顧客から、メール・FAX・電話で、見積依頼が届く(メールは自由な文章、FAXは「商品名:個数」の定型票、電話は社員が書いたメモ)
2. 依頼内容(品目・数量・希望納期)を読み取り、社内の見積依頼フォームに転記する
3. 価格表を見て、見積金額を計算する
4. 特別値引きが必要な場合は、課長に相談して決める
5. 見積書を作成し、顧客にメールで送る依頼の届き方の違いは、たとえば次のようなものです。
【メール(request-2)】椅子を5〜6脚と、ホワイトボードを1枚ほしいです。いくらになりますか? できるだけ早くほしいです。
【FAX(request-3)】商品名:コピー用紙A4 個数:30
【電話メモ(request-4)】・ペン 黒 箱で2 / 希望:10/9まで(至急)ルーブリック(自己採点)
- 3工程以上に分けられ、各工程に「AIか人か」が書かれている
- メールの自由な文章・FAXの定型票・電話メモという、入力の形式の違いを、統一の形式にそろえる工程がある
- 価格表にない商品、数量や納期が曖昧な依頼、納期に間に合わない依頼を、人が判断する工程と、確認ポイントがある
- 見積金額の計算は、AIに任せず、価格表と、表計算などの確認手段を組み合わせる設計になっている(またはAIの計算を、人が検算する設計になっている)
- 特別値引きの判断が、人の担当になっている
- 顧客へ送信する前に、人が最終確認する工程がある
- (発展課題)4件の依頼を、AIで統一の形式にそろえ、答え合わせの内容と突き合わせた
答え合わせ用:4件の依頼の正解
発展課題で、AIが統一の形式にそろえた結果を、次の表と突き合わせます。 金額は、数量どおりに、価格表の単価をかけた参考値です。
| 依頼 | 品目と数量(価格表どおり) | 数量どおりの金額 | 要確認・注意 |
|---|---|---|---|
| 1 北斗商事(メール) | コピー用紙A4 20/ボールペン(黒)10 | 9,600+6,500=16,100円 | 特になし(希望納期は10/20) |
| 2 もりや(メール) | デスクチェア(標準)5〜6(依頼は「椅子」)/ホワイトボード | チェアのみ 64,000〜76,800円 | 「椅子」がデスクチェアでよいか。数量が5〜6の幅。ホワイトボードは取扱なし。希望納期が不明 |
| 3 みなと食品(FAX) | コピー用紙A4 30/クリアファイル 5/シュレッダー(A4対応)1 | 14,400+6,000+15,800=36,200円 | 特になし(希望納期は10/14。シュレッダーの納期目安5営業日は、数え方によっては、ぎりぎり) |
| 4 東光設計(電話メモ) | ワークデスク 3/デスクチェア 3/ボールペン(黒)2 | 64,500+38,400+1,300=104,200円 | 希望の10/9に、ワークデスク(10営業日)とデスクチェア(7営業日)は間に合わない。「ペン 黒 箱で2」がボールペン2箱でよいか。ボールペン2箱は、最小注文数(5)を下回る |
よくある失敗と解説
工程分解の判断は、「間違えたときの被害の大きさ」と「判断が必要か」で行います。
- 入力の形式をそろえる工程(工程2):メール・FAX・電話メモは、書き方がバラバラです。最初に、統一の形式にそろえてから、後の工程に渡します。AIが得意な作業ですが、数量や納期の読み違いは起きるので、人が確認します
- 例外の判断:取扱のない商品、曖昧な数量、間に合わない納期、最小注文数の不足は、人が判断して、顧客に確認します
- 計算:AIは、計算を間違えることがあるため、AIの計算を信用せず、価格表と表計算で確かめます
- 値引きの判断:権限と責任が関わるので、人が判断します
- 顧客への送信:外部に出る最後の関門なので、人が必ず確認します
このサンプルを、Claude Codeで試したところ、次の点を、要確認として挙げました。 取扱のない商品、「椅子」の言い換え、数量の幅、間に合わない納期、最小注文数の不足です。 一方で、納期を数えるときの休日の扱い(土日と10/12の祝日)は、AIが自分で仮定していました(AI自身が、前提として注記しています)。 納期の数え方のような、社内のルールは、AIの仮定に任せず、人が決めて、指示に書きます。
AIに「見積書まで全部作って、送って」と頼むのは、確認の機会を、すべて飛ばす設計です。 工程ごとに、人が確認する場所を残してください。
問2 プロンプトをテンプレートにする
状況:第1章で作った議事録のプロンプトを、部署のみんなが使えるよう、テンプレートにします。社内向けの会議にも、社外向けの会議にも使えるようにします。
成果物:テンプレート(変わる部分を【】で示す)と、使い方の説明。
【元のプロンプト(第1章より)】
あなたは社内の会議記録を整理する事務担当です。以下の「会議メモ」から、共有用の議事録を作成してください。
目的:会議に参加していない部長にも、決まったこと・決まっていないこと・次に誰が何をするかが一目で分かる議事録を作る。
制約:
- メモに書かれていない事実(担当者・期限・金額など)を補わない。不明な項目は「未定」と書く
- 雑談や業務に関係のない話題は含めない
- 断定できない発言は「決定事項」に入れず、「未決事項」に入れる
出力形式:決定事項/未決事項/担当・期限 の3区分ルーブリック(自己採点)
- 変わる部分(読み手・会議名・メモ・社内か社外か)が、【】で示されている
- 社外向けのときだけ追加する制約(社内の原価・個人の連絡先などを含めない)が、条件つきで組み込まれている
- 元のプロンプトの制約(補わない・雑談を除く・曖昧な発言は未決)が、削られていない
- 使い方の説明に、「機密情報は伏せてから貼る」が含まれている
- テンプレートを、実際に、社内向けと社外向けの両方の例で試した
よくある失敗と解説
テンプレート化で最も多い失敗は、変数を増やしすぎることです。 変わる部分が多すぎると、使う人が、何を入れるべきか迷います。
変数は、本当に毎回変わるものだけに絞ります。 今回の例なら、次の4つで十分です。
- 【会議名】
- 【読み手】(例:参加していない部長)
- 【社外共有か】(はい/いいえ)
- 【会議メモ】
「社外共有か」で内容が変わる部分は、テンプレートの中に、条件を書いておきます。
**追加の制約(【社外共有か】が「はい」の場合のみ)**
- 原価・社内の方針・個人の連絡先・競合他社の名前を含めないもう一つ大切なのは、第1章〜第7章で学んだ制約を、削らずに引き継ぐことです。 「短くしよう」として、大事な制約が消えると、元の失敗が戻ってきます。
問3 AIに、出力を採点させる
状況:議事録のAI出力を、毎回、目で確認するのは大変です。採点の一次チェックを、別のAIに頼みたいと考えています。
成果物:採点用のプロンプトと、採点の限界についてのメモ。
【元メモ】
【システム更改 打ち合わせ 10/3】出席:森、大野、清水
- 現行サーバは来年3月で保守終了。更改は必須
- 移行先はクラウドとオンプレの2案。どちらにするかは次回までに大野さんが比較表を作る
- 予算枠は来週の経営会議で確認(森さん)
- 新システムの稼働時期は、来年4月か5月ごろ
【AIが作った議事録】
決定事項
・現行サーバは来年3月で保守終了のため更改する
・移行先はクラウドに決定
・新システムは来年4月に稼働開始
担当・期限
大野|比較表の作成|10/10
森|予算枠の確認|来週の経営会議
【採点の基準(ルーブリック)】
1. 未決の事項を、決定事項に入れていない
2. 幅のある表現(4月か5月)を、1つに絞っていない
3. 元メモにない日付・数字を、追加していない
4. 担当者が、元メモのとおりである
5. 元メモの決定事項が、漏れなく入っているルーブリック(自己採点)
- 採点用のプロンプトに、「各基準について、〇か×か」「根拠として、元メモと議事録の該当箇所を引用する」を指示した
- 判断が難しい場合は、「要確認」とする出口を用意した
- 基準1〜3が、×になる結果が得られた(クラウドに決定、来年4月、10/10)
- 「総合点」ではなく、基準ごとの結果を出すようにした
- 採点AIの限界(採点も間違える)に触れ、人が一定の割合で抜き取り確認する運用を書いた
よくある失敗と解説
「AIにAIを採点させる」のは便利ですが、採点するAIも、間違えます。 甘く採点することも、厳しすぎることもあります。
採点プロンプトの設計の型です。
以下の「元メモ」「議事録」「採点の基準」を使って、議事録を採点してください。
**制約**
- 基準ごとに、〇・×・要確認のいずれかを付ける
- 各判定に、根拠となる元メモと議事録の該当箇所を、そのまま引用する
- 判断できない場合は、無理に〇×を付けず、「要確認」とする
- 総合点は出さない。修正案も出さない採点結果の使い方には、注意が必要です。
- 採点AIは、あくまで一次チェック。最終確認は、人が行う
- 定期的に、AIの採点結果を人が抜き取って検証し、採点AIの癖を把握する
- ×が付いた項目だけでなく、〇が付いた項目にも、間違いが混ざる可能性がある
「採点AIが〇を付けたから大丈夫」と考えてしまうと、確認がなくなり、第1章から学んだ、最終責任は人にあるという原則が崩れます。
問4 職場のAI利用ガイドを作る
状況:部署でAIを使う人が増え、ルールがないことが、不安材料になっています。事故の事例を素材に、1枚のガイドを作ります。
成果物:AI利用ガイド(1枚)。会社の規定が分からない部分は、勝手に書かず、「要確認」とする。
【最近あった、ヒヤリハットの事例(架空)】
事例1:顧客名と金額が入った一覧表を、そのままAIに貼り付けて、要約させた
事例2:AIが計算した見積の合計金額を、確認せずに見積書に書き、顧客に送りそうになった
事例3:AIが書いた集計スクリプトを、コピーを取らずに共有フォルダで実行し、一部のファイルが消えたルーブリック(自己採点)
- 3つの事例それぞれに対応するルール(入力してよい情報の基準/AI出力の検証の義務/実行前のテスト)が、ガイドに含まれている
- 会社の実際のAI利用規定が分からない箇所(利用してよいツール、社内の許可の要否など)を、AIが勝手に書かず、「【要確認:〇〇】」としている
- 「困ったときの相談先」の欄が、空欄または「要確認」になっている(AIが架空の窓口を作っていない)
- 「AIの出力は、必ず人が確認する。最終責任は人にある」が、明記されている
- ガイドが、1枚(箇条書きで、20項目以内)に収まっている
よくある失敗と解説
この問題では、AIが、実在しない社内規定を、それらしく作ってしまうことが最大の罠です。 「情報セキュリティ部への事前申請が必要です」のような一文が、実際にはない部署や手続きとして、書かれてしまうことがあります。
制約の型です。
**制約**
- 事例から導けるルールのみを書く。会社の規定・部署名・申請手続き・利用可能なツールは、書かない
- 会社の規定に関わる箇所は、「【要確認:〇〇】」と書く
- 各ルールの末尾に、どの事例に対応するかを書く(例:[事例1])ガイドは、AIが作ったものを、そのまま配るのではなく、必ず、情報システム部門や上長と一緒に、実際の規定と照らして確認します。 ここまでの各章で、「補わない」「要確認と書く」「根拠を示す」と練習してきたことが、そのまま、ルールづくりにも使えます。
プロンプト設計の確認問題
ここまでの内容を、選択式で確認しましょう。
問1. 毎週の報告書づくりを、複数の工程に分けてAIに任せるとき、最も適切な工程の割り当てはどれか。
問2. プロンプトを部署で共有するテンプレートにするときの注意として、最も適切なものはどれか。
問3. 議事録のAI出力を別のAIに採点させる運用として、最も適切なものはどれか。
問4. 職場のAI利用ガイドをAIに下書きさせるとき、会社の実際の規定や申請窓口の扱いとして、最も適切なものはどれか。
繰り返し使う制約は、AIに登録して短くする
この章のプロンプトは、制約を毎回書き込む形で練習しました。 同じ業務を繰り返すなら、変わらない制約は、AIにあらかじめ登録しておくことで、依頼を短くできます。
この章で登録しておくとよいのは、工程ごとのテンプレート、採点の基準、社内のAI利用ルールです。 ChatGPT・Claude・Geminiでの登録手順は、生成AIに社内ルールを覚えさせるスキル設定のやり方で解説しています。 登録しても、最終確認は人が行うことに変わりはありません。
自分の職場に置き換える
最後の課題は、コース全体の集大成です。
- 自分の仕事で、毎週または毎月繰り返している業務を1つ選ぶ
- 業務を3〜5工程に分け、各工程を「AI/人」に割り当てる。人が判断する工程と、確認ポイントを決める
- 最初の工程のプロンプトを、テンプレート(変わる部分は【】)として書く。第1〜7章の制約から、2つ以上を組み込む
- 1回試し、AIの出力に対して人が修正した点を、記録する。次回、その修正を防ぐ制約を1つ追加する
仕上げに、S.E.L.F.ループの「F(Forge it)」として、このコースで学んだ型を、同僚に説明するつもりで、1枚にまとめてみてください。 説明できる型は、あなたの仕事の中で、繰り返し使える道具になっています。
この章のまとめ
- 繰り返しの業務は、工程に分け、AIが担う部分と、人が判断する部分を分ける
- 工程ごとに、5要素で設計する。前の工程の出力を、次の工程の入力にすると、間違いの場所が特定できる
- プロンプトのテンプレートは、変数を絞り、これまでの章の制約を削らずに組み込む
- AIによる採点は、一次チェックにとどめる。人が、抜き取りで検証する
- AI利用のルールは、事例から導ける範囲を書き、会社の規定は、AIに作らせず、「要確認」とする
- 使ったプロンプトのバージョンと、人が直した点を記録すると、仕組みが育つ
コース全体を通して
8章を通して、繰り返し出てきた原則は、次の5つです。
- 投げる前に設計する:目的・入力・制約・出力形式・検証を、先に決める
- 補わせない:素材にないことは、「未定」「要確認」「記載なし」と書かせる
- 根拠を出させる:出典・行番号・引用で、人が確かめられる状態にする
- 最終責任は人にある:AIの出力は、元の素材と突き合わせて確認する
- 機密は、貼る前に伏せる:AIに渡さないことが、最も確実な防御になる
これらは、どの業務でも、使える型です。 次は、あなたの職場の、具体的な1つの業務から、始めてみてください。