この章で学ぶこと
これまでの7章は「知識」(科目A-2相当)でしたが、この章は「技能」(科目B相当)を扱います。PD-S試験の対象者像は経営層ではなく、システム設計・実装・運用を担う実装層のエンジニアです。そこでこの章は、産業用IoTセンサーを開発・製造する「サンプルIoT株式会社」でシステムアーキテクトを務める木村さんが、上級システムアーキテクトの遠藤さんのレビューを受けながら新製品ラインのシステム基盤を構築していく一連の物語として構成しています。技能4グループ・15項目を、木村さんの実務を通じて順に体験していきましょう。
大項目1: システムアーキテクチャに関すること
新製品「スマートセンサーゲートウェイ」の開発プロジェクトが始まり、木村さんはシステムアーキテクトとして参画します。
1-1. デジタル戦略,業務モデリング及びニーズ分析を踏まえた業務要件の定義,システム化計画の立案
木村さんはまず、営業部門と工場部門にヒアリングを行い、「センサーデータをリアルタイムに可視化したい」という業務ニーズを整理しました。第1章で学んだDX戦略との整合性を確認しながら業務要件を定義し、システム化計画を立案しました。
1-2. システム要件における機能要件の定義(データ構造の設計を含む)
センサーから送られてくる温度・湿度・振動データをどう保存するかを検討する際、木村さんは第4章で学んだ関係モデルとグラフ型のデータモデルの両方を比較し、時系列データの検索性能を優先して専用のデータ構造を設計しました。
1-3. システム要件における非機能要件の定義(性能,品質,セキュリティなど)
「1秒あたり数千件のデータを処理する」という要求に対し、木村さんは第5章で学んだ非機能要件の考え方に基づき、性能要件・セキュリティ要件・保守要件を具体的な数値目標として明文化しました。
1-4. クラウドサービスの活用,マイクロサービス化,仮想化,マイグレーションなどを考慮したシステムアーキテクチャ設計
システム基盤の検討では、木村さんは第2章で学んだクラウド移行の5Rの考え方を応用し、既存のオンプレミス設備の一部はRetain(維持)、新規のデータ処理基盤はRefactor(クラウド前提で作り直す)と判断し、機能ごとに独立してスケールできるマイクロサービスアーキテクチャを採用しました。
1-5. IoTを含む組込みシステム,制御システムにおける,ソフトウェアとハードウェアの間のトレードオフ,セーフティ・高信頼性,環境・法令などを考慮したシステムアーキテクチャ設計
工場内で24時間稼働するセンサーゲートウェイのため、木村さんは第7章で学んだフィードバック制御と省電力技術のトレードオフを検討し、高信頼性を優先してハードウェア側に一部の異常検知ロジックを持たせる設計判断を下しました。
大項目2: ネットワークに関すること
センサーゲートウェイが完成に近づき、木村さんは工場内ネットワークの設計を担当します。
2-1. ネットワーク基盤(クラウド環境を含む)を構成する各種通信方式,プロトコル,アドレッシング,通信規格,VPN,ネットワーク・サーバ仮想化技術,ネットワークセキュリティ技術などのネットワーク関連技術の適用
木村さんは第3章で学んだLPWAとWi-Fiを用途に応じて使い分け、工場と本社間の通信にはインターネットVPNを採用して、コストと安全性のバランスを取りました。
2-2. インターネット,クラウドサービス,及び各種ネットワークサービスの選定とオンプレミスネットワークを組み合わせた,ネットワーク基盤の設計(冗長化含む),構築,導入
工場のネットワークが停止すると生産ラインに影響が出るため、木村さんは第2章で学んだマルチAZ構成の考え方を参考に、通信経路を二重化するマルチホーミングを導入し、単一障害点をなくす設計にしました。
2-3. ネットワーク基盤の運用,トラブル対応(原因特定・対処),保守及び改善
稼働開始後、一部エリアで通信が不安定になる問題が発生しました。木村さんは第3章で学んだパケットアナライザーとSNMPを使って原因を特定し、電波干渉を避けるようアクセスポイントの配置を見直しました。
大項目3: フィジカルコンピューティングに関すること
センサーゲートウェイ本体のハードウェア・ソフトウェア設計も、木村さんの担当範囲です。
3-1. IoTを含む組込みシステム,制御システムのソフトウェア設計(リアルタイム処理など)
センサーデータの取りこぼしを防ぐため、木村さんは第7章で学んだタイミング設計の考え方に基づき、割り込み処理を優先させるプリエンプティブ方式のリアルタイムOSを採用しました。
3-2. IoTを含む組込みシステム,制御システムのハードウェア設計(センサー,アクチュエーターの活用など)
温度センサーの選定にあたり、木村さんは第7章で学んだアナログ半導体の特性を比較し、精度と消費電力のバランスが良い部品を選定しました。
3-3. 要素技術,デバイスなどの適用可能性(環境面の要件適合性も含む)を踏まえた選定・調達・導入
工場の高温多湿環境で使用するため、木村さんは候補デバイスの動作保証温度と耐タンパ性を確認し、環境要件に適合する部品のみを調達候補に絞り込みました。
大項目4: システムの開発・運用に関すること
開発フェーズに入り、木村さんはチームの開発プロセスとリリース後の運用にも関わります。
4-1. システム及びソフトウェアの設計・実装・インテグレーション
木村さんは第5章で学んだソフトウェア統合テストの考え方に沿って、各サブシステムを段階的に結合し、想定外の相互作用がないかを確認しながらインテグレーションを進めました。
4-2. システムのテストの計画と実施,結果の分析,品質評価
リリース前のテスト計画では、木村さんは第5章で学んだテストの網羅度と欠陥密度を指標に設定し、テスト結果を分析して品質基準を満たしているかを評価しました。
4-3. システム開発の手法の適用
開発チームの生産性を上げるため、木村さんは第7章で学んだ仕様駆動開発(SDD)を導入し、Markdownで仕様を明文化してからAIエージェントに実装を進めさせる方式を試験導入しました。生成されたコードは必ずLintチェックと人間のレビューを通すルールを徹底し、開発速度と品質のバランスを取りました。
4-4. 開発プラットフォームの活用,システムの運用管理,インフラストラクチャの管理,サイト信頼性エンジニアリング(SRE)
リリース後、木村さんは第6章で学んだSREの考え方を取り入れ、エラーバジェットを設定して新機能リリースと安定性のバランスを管理し、障害発生時にはランブックに沿って対応する体制を整えました。
AIで学ぶ
ここまでの技能項目は、ChatGPTやClaudeなどの生成AIに以下のプロンプトを投げかけると、比較表つきでさらに深く掘り下げて学習できます。コピーして使ってみましょう。
あなたはプロフェッショナルデジタルスキル(システム)試験の講師です。「システム開発実務ケーススタディ(技能)」の範囲について、以下の技能項目を初学者向けに**関連づけながら**説明してください(単体の丸暗記より、用語同士のつながりを理解したほうが記憶に定着しやすく、試験本番で紛らわしい選択肢を見分ける力もつくためです)。技能項目同士の違いが分かる**比較表**を最後に付けてください。
【システムアーキテクチャ】業務要件の定義とシステム化計画の立案、機能要件の定義、非機能要件の定義、クラウド・マイクロサービスを考慮したアーキテクチャ設計、組込みシステムのアーキテクチャ設計
【ネットワーク】ネットワーク関連技術の適用、ネットワーク基盤の設計・構築・導入、ネットワーク基盤の運用・トラブル対応
【フィジカルコンピューティング】組込みシステムのソフトウェア設計、組込みシステムのハードウェア設計、要素技術・デバイスの選定
【システムの開発・運用】設計・実装・インテグレーション、テストの計画と実施、システム開発の手法の適用、開発プラットフォームとSREAIに用語リストだけを渡すと、辞書をそのまま読み上げるような無機質な説明が返ってくることがあります。このプロンプトが役割(試験の講師)・関連づけの指示・出力形式(比較表)の3つを指定しているのはそれを避けるためです。この章は知識ではなく実務判断力を問う技能のため、自分なりのケーススタディを作らせて「自分ならどう判断するか」を言語化する練習に使うのもおすすめです。
章末チェック
最後に、この章で学んだ知識をアウトプットして定着させましょう。全問に答えたら「答え合わせ」を押してください。
問1. 既存のオンプレミス設備の一部は維持し、新規のデータ処理基盤はクラウド前提で作り直すという判断を下す場合、クラウド移行の5Rのうちどの組み合わせに該当するか。
問2. 工場のネットワークが停止すると生産ラインに影響が出る場合、システムアーキテクトとして最も適切な設計判断はどれか。
問3. 開発チームの生産性向上のため仕様駆動開発(SDD)を導入する際、システムアーキテクトとして最も適切な運用方針はどれか。
問4. リリース後の運用でSRE(サイト信頼性エンジニアリング)の考え方を取り入れる際、新機能リリースと安定性のバランスを管理するために設定する指標はどれか。
問5. 工場の高温多湿環境で使用するセンサーデバイスを選定する際、システムアーキテクトとして最も適切な確認事項はどれか。
この章のまとめ
この章では、システムアーキテクト・木村さんの新製品開発プロジェクトを通じて、システムアーキテクチャ・ネットワーク・フィジカルコンピューティング・システムの開発運用という4つの技能領域を、実務のケーススタディとして体験しました。これで第1章から第8章まで、PD-Sの科目A-2(専門知識)と科目B(技能)を一通り学び終えたことになります。
コースを完走したら、総復習で全体の理解度を確認し、実際の試験対策(過去問演習やCBT模擬試験)に進みましょう。→ コースTOPに戻る