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この章で学ぶこと

これまでの7章は「知識」(科目A-2相当)でしたが、この章は「技能」(科目B相当)を扱います。PD-M試験の対象者像は現場の担当者ではなく、組織のマネジメント層・変革推進者です。そこでこの章は、中堅製造業「サンプル製造株式会社」でDX推進室長を務める中村さんが、執行役員CDOである吉田さんの後ろ盾を受けながら全社DXを推進していく一連の物語として構成しています。技能4グループ・15項目を、中村さんの実務を通じて順に体験していきましょう。

大項目1: 組織及びビジネスの変革・デジタル戦略に関すること

DX推進室が発足したばかりの中村さんは、まず変革の土台となる現状把握から着手します。

1-1. 外部環境,内部環境及び組織内外のステークホルダのニーズの分析・把握

中村さんはまず、競合の動向や規制の変化といった外部環境と、自社の技術力・組織文化といった内部環境を整理しました。あわせて、経営陣・現場部門・取引先という異なる立場のステークホルダに個別にヒアリングを行うと、経営陣は「コスト削減」、現場は「業務負荷の軽減」、取引先は「発注の効率化」と、期待する成果が三者三様であることが分かりました。第1章で学んだ利害関係者のニーズ及び期待の理解を踏まえ、これらの期待を1枚の資料に整理し、優先順位をすり合わせる場を設けることから始めました。

1-2. あるべき姿かつ経営戦略と整合するビジネスモデルの策定及びビジネスプロセスの設計

ヒアリング結果をもとに、中村さんは「受注生産中心から、データを活用した需要予測型の生産へ」というあるべき姿(To-beモデル)を描きます。第2章で学んだ情報システムのあるべき姿と経営戦略との整合性を確認しながら、新しいビジネスモデルを支える業務プロセス(受注→生産計画→出荷)を設計し直しました。

1-3. ポートフォリオ及びプログラムのマネジメント,マーケティング,顧客エンゲージメントなどの活用

DXの取り組みは1つのプロジェクトでは終わりません。中村さんは複数の関連施策(需要予測システム導入・生産ライン改修・営業DX)を1つのプログラムとして束ね、全体の優先順位を管理するポートフォリオの視点で予算配分を経営会議に提案しました。あわせて、既存顧客との関係を深めるマーケティング施策も並行して企画し、顧客エンゲージメントの向上を目指しました。

1-4. イノベーションマネジメントの実践とイノベーション活動を支える組織文化の醸成

新しい取り組みには現場から「今のやり方で十分」という抵抗の声も上がります。中村さんは第1章で学んだ変革に対する抵抗の把握を踏まえ、小さな成功事例を早期に作って共有する場を設けるなど、失敗を恐れず挑戦できる組織文化の醸成に時間をかけました。

1-5. 事業戦略立案におけるシステム思考・デザイン思考の活用と経営課題の解決やデジタル戦略の実現への展開

生産現場と営業部門の対立が浮き彫りになった際、中村さんは個々の問題を対症療法的に解決するのではなく、部門間の関係性を俯瞰するシステム思考で全体の構造を捉え直しました。あわせて現場の声をワークショップで引き出すデザイン思考のアプローチを組み合わせ、経営課題の解決とデジタル戦略の実現を1つの物語としてつなげていきました。

大項目2: サービスマネジメントに関すること

新しい需要予測システムが稼働を始めると、中村さんの役割はシステムを安定的に運用するフェーズへと移ります。

2-1. 顧客及び供給者とのつながりを管理し,サービスレベルを維持するために必要な,事業関係管理,サービスレベル管理,供給者管理

システムの保守を担う外部ベンダーとの間で、第4章で学んだSLAを締結し、月次のサービスレベル管理の会議体を設けました。社内の利用部門とも定期的に対話する事業関係管理の場を持ち、要望や不満を早期に吸い上げる体制を作りました。

2-2. 安定性を維持しつつ新規サービス又はサービス変更を行うために必要な,変更管理,リリース及び展開管理

需要予測モデルの精度を上げるための機能追加が持ち上がった際、中村さんは思いつきでの改修を許さず、第4章で学んだ変更管理のプロセスに沿って影響範囲を審査し、リリース計画を立ててからリリース及び展開管理を実施しました。

2-3. サービスの運用品質を確保するために必要な,サービスデスク,インシデント管理,問題管理

稼働直後、現場から「予測結果が表示されない」という問い合わせがサービスデスクに相次ぎました。中村さんはインシデント管理のプロセスで応急対応を優先させつつ、根本原因を追う問題管理を並行して進めるよう指示し、同じ問い合わせが繰り返されないようにしました。

2-4. サービスが利用可能な状態を保つために必要な,サービス可用性管理,サービス継続管理

生産計画に直結するシステムであるため、中村さんはサービス可用性管理の指標(MTBF・MTTRなど)を定期的に確認するとともに、大規模障害を想定したサービス継続計画を整備し、目標復旧時間(RTO)を経営層と合意しました。

大項目3: プロジェクトマネジメントに関すること

並行して立ち上げた生産ライン改修プロジェクトでは、中村さんはプロジェクトオーナーとして関わります。

3-1. 組織内外の環境の変化への適応,不確実性への対応,及び価値の創出に関するプロジェクトマネジメント

原材料価格の急騰という想定外の事態が発生した際、中村さんは第5章で学んだリスクマネジメントの考え方に沿って計画を柔軟に見直し、当初のスコープを一部縮小してでも早期に価値を生み出せる範囲から着手する判断を下しました。

3-2. プロジェクト組織,プロジェクトチーム及びチームのメンバーに関するプロジェクトマネジメント

生産部門と情報システム部門の混成チームを立ち上げた中村さんは、両部門から信頼されるプロジェクトマネージャを指名し、第5章で学んだチームビルディングの考え方を踏まえてキックオフ合宿を企画し、部門間の壁を早期に取り払いました。

3-3. プロジェクトの立ち上げ,計画,実行・管理及び終結のプロセスに関するプロジェクトマネジメント

プロジェクトの節目ごとに、中村さんは第5章で学んだ各プロジェクトフェーズの開始のマネジメントと終結のマネジメントを欠かさず実施し、フェーズが変わるたびに「本当に続ける価値があるか」を確認する正当性提示の進展のプロセスを徹底しました。

大項目4: 組織のガバナンス・監査に関すること

DXの取り組みが全社に広がるにつれ、中村さんはガバナンス面での役割も求められるようになります。

4-1. 組織のガバナンス,マネジメント及び内部統制の構築と運用に関する助言(支援を含む)

複数のシステムが乱立し始めたことを懸念した中村さんは、第6章で学んだITガバナンスの実現の考え方に基づき、新規システム導入時の承認プロセスを整備するよう経営会議に助言しました。

4-2. デジタル環境及びその企画・開発・導入・運用・保守・利用などのプロセスに関する監査の実施及び報告

年次のシステム監査では、中村さんは監査人からのシステム監査計画の策定への協力を求められ、需要予測システムの企画から運用までの各プロセスが適切に文書化されているかを確認し、監査報告書の指摘事項に対する改善計画を策定しました。

4-3. 情報セキュリティ,新技術(AIほか)の利活用などに関する監査の実施及び報告

需要予測に生成AIを活用する新しい取り組みについて、中村さんは第7章で学んだAIガバナンスの視点から、学習データに取引先の機密情報が含まれていないかを事前に確認し、監査での指摘を待つのではなく自ら統制を効かせる姿勢を貫きました。

AIで学ぶ

ここまでの技能項目は、ChatGPTやClaudeなどの生成AIに以下のプロンプトを投げかけると、比較表つきでさらに深く掘り下げて学習できます。コピーして使ってみましょう。

あなたはプロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント)試験の講師です。「マネジメント実務ケーススタディ(技能)」の範囲について、以下の技能項目を初学者向けに**関連づけながら**説明してください(単体の丸暗記より、用語同士のつながりを理解したほうが記憶に定着しやすく、試験本番で紛らわしい選択肢を見分ける力もつくためです)。技能項目同士の違いが分かる**比較表**を最後に付けてください。

【組織及びビジネスの変革・デジタル戦略】ステークホルダのニーズ分析、あるべき姿と整合するビジネスモデルの策定、ポートフォリオ及びプログラムのマネジメント、イノベーションマネジメントの実践、システム思考・デザイン思考の活用
【サービスマネジメント】事業関係管理・サービスレベル管理・供給者管理、変更管理・リリース及び展開管理、サービスデスク・インシデント管理・問題管理、サービス可用性管理・サービス継続管理
【プロジェクトマネジメント】環境変化への適応と価値創出、プロジェクト組織・チームのマネジメント、立ち上げ・計画・実行・管理・終結のプロセス
【ガバナンス・監査】ガバナンス・マネジメント・内部統制の構築と運用への助言、デジタル環境に関する監査の実施及び報告、情報セキュリティ・新技術の利活用に関する監査の実施及び報告

AIに用語リストだけを渡すと、辞書をそのまま読み上げるような無機質な説明が返ってくることがあります。このプロンプトが役割(試験の講師)・関連づけの指示・出力形式(比較表)の3つを指定しているのはそれを避けるためです。この章は知識ではなく実務判断力を問う技能のため、自分なりのケーススタディを作らせて「自分ならどう判断するか」を言語化する練習に使うのもおすすめです。

章末チェック

最後に、この章で学んだ知識をアウトプットして定着させましょう。全問に答えたら「答え合わせ」を押してください。

問1. DX推進室長の中村さんが、経営陣・現場部門・取引先それぞれにヒアリングした結果、期待する成果が三者三様であることが分かった。マネジメント層として最も適切な対応はどれか。

問2. 需要予測システムの機能追加の要望が現場から持ち上がった際、DX推進室長として最も適切な進め方はどれか。

問3. 生産ライン改修プロジェクトの途中で原材料価格が急騰し、当初の計画通りに進めることが難しくなった。プロジェクトマネジメントの観点から最も適切な対応はどれか。

問4. 生産部門と情報システム部門の混成プロジェクトチームを立ち上げる際、DX推進室長として最も適切な対応はどれか。

問5. 需要予測に生成AIを活用する新しい取り組みについて、DX推進室長として最も適切な対応はどれか。

この章のまとめ

この章では、DX推進室長・中村さんの1年を通じて、ビジネス変革・サービスマネジメント・プロジェクトマネジメント・ガバナンス監査という4つの技能領域を、実務のケーススタディとして体験しました。これで第1章から第8章まで、PD-Mの科目A-2(専門知識)と科目B(技能)を一通り学び終えたことになります。

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