目安時間: 約150分 読了目安: 11分

この章で学ぶこと

これまでの章で扱った「守る技術」は、システムやネットワークの仕組みを理解していないと的確に使えません。この章では、システムの構成・信頼性設計、データベース、ネットワークという、セキュリティ対策の土台になるIT基礎知識を扱います。セキュリティ分野ほど深入りせず、試験で問われる範囲に絞って効率よく押さえます。

システム構成要素

処理方式は、1台のコンピュータで処理する集中処理と、複数のコンピュータで分担する分散処理、即座に処理するリアルタイム処理とデータをためてまとめて処理するバッチ処理を対比で理解します。信頼性を高める構成としては、予備の機器を用意する冗長構成、処理を分散させる負荷分散、複数の機器を束ねて1つのシステムのように見せるクラスタ、要求を出すクライアントと処理するサーバに役割を分けるクライアントサーバシステムが代表例です。

クラウド活用の広がりを踏まえ、アプリを提供するSaaS・開発基盤を提供するPaaS・インフラを提供するIaaSというクラウドコンピューティングの3階層、データをクラウドに送らずその場で処理するエッジコンピューティング、1台の物理サーバに複数の環境を作る仮想化VM)、デスクトップ環境ごと仮想化するVDIを押さえます。ストレージの冗長化技術であるRAID、ファイル単位で共有するNAS、ストレージ専用のネットワークを構築するSANの違いも頻出です。

信頼性設計は、誤操作をしても危険が生じないようにするフールプルーフと、故障時に安全側に動作するフェールセーフの違いが重要です。評価指標としては、応答の速さを示すレスポンスタイムと処理能力を示すスループット、信頼性を示すMTBF(平均故障間隔)MTTR(平均修理時間)、それらから求める稼働率をセットで理解します。

扱う用語(精選・25語)

  • 集中処理/分散処理/リアルタイム処理/バッチ処理
  • 冗長構成/負荷分散/クラスタ/クライアントサーバシステム/シンクライアント
  • クラウドコンピューティング(SaaS,PaaS,IaaS)/エッジコンピューティング
  • 仮想化(VM)/VDI(デスクトップ仮想化)
  • RAID/NAS/SAN
  • フールプルーフ/フェールセーフ/フォールトトレラント
  • レスポンスタイム/スループット/MTBF/MTTR/稼働率
  • イニシャルコスト/ランニングコスト

深掘り: クラウド選定の基準:SaaS・PaaS・IaaSの使い分け

データベース

現実の情報を表形式で管理する関係データベースとそれを管理するデータベース管理システムが土台です。データの重複や矛盾を排除するために表を整理する考え方(データ重複の排除)、データの意味や出所を記録するメタデータ、データベースを操作する言語であるSQLを押さえます。

複数の処理が同時にデータを更新しようとした際の競合を防ぐ同時実行制御(排他制御)、そして障害に備えたバックアップの方式であるフルバックアップ・差分バックアップ・増分バックアップによる障害回復は、第3章で学んだバックアップの考え方とあわせて理解すると定着しやすくなります。大量のデータを分析用に整理して蓄積するデータウェアハウス、量が膨大なビッグデータ、複数のサーバにファイルを分散して保存する分散ファイルシステムも押さえておきます。

扱う用語(精選・10語)

  • 関係データベース/データベース管理システム
  • データ重複の排除/メタデータ/SQL
  • 同時実行制御(排他制御)/障害回復(フルバックアップ,差分バックアップ,増分バックアップ)
  • データウェアハウス/ビッグデータ/分散ファイルシステム

深掘り: OSI参照モデル・TCP/IP・DNS・正規化とは?ネットワークとDBの基礎を1ページで整理

ネットワーク

小規模な範囲をつなぐLAN(有線・無線、識別名のSSID)と、それらを広域でつなぐWAN、インターネットへの接続を提供するインターネットサービスプロバイダ(ISP)という規模の違いから理解します。通信の共通規約であるTCP/IPのもと、世界に1つだけのグローバルIPアドレスと組織内だけで使うプライベートIPアドレス、ネットワークの範囲を区切るサブネットマスク、機器を識別するMACアドレス、32ビットのIPv4と128ビットのIPv6の違い、サービスの種類を示すポート番号を押さえます。機器の役割は、異なるネットワーク同士をつなぐルータ、同一ネットワーク内で中継するスイッチングハブで区別し、ドメイン名とIPアドレスを対応づけるDNSは「インターネットの電話帳」とイメージすると理解しやすくなります。

代表的なプロトコルとしては、Webの通信規約であるHTTP、メール送受信で使うSMTP・POP3・IMAPの役割分担、機器にIPアドレスを自動割り当てするDHCP、無線LANの規格であるWi-Fiを押さえます。Webサイト訪問時の状態を保持するcookie、住所にあたるURLもあわせて理解しておきます。拠点間を安全につなぐVPN(第3章の実装技術と対応)、電子商取引のEC、企業間でデータをやり取りするEDI、移動体通信の5G、音声通話を実現するVoIPも新しい通信サービスの用語として押さえておきます。

扱う用語(精選・23語)

  • LAN(SSID)/WAN/インターネットサービスプロバイダ(ISP)
  • TCP/IP/グローバルIPアドレス/プライベートIPアドレス/サブネットマスク/MACアドレス/IPv4/IPv6/ポート番号
  • ルータ/スイッチングハブ/DNS
  • HTTP/SMTP/POP3/IMAP/DHCP/Wi-Fi
  • cookie/URL
  • VPN/EC(電子商取引)/EDI(電子データ交換)/5G/VoIP

深掘り: OSI参照モデル・TCP/IP・DNS・正規化とは?ネットワークとDBの基礎を1ページで整理

仕組みを理解する: DNSは実際にどうやって名前を解決しているのか

「DNSはインターネットの電話帳」という説明はイメージをつかむには便利ですが、実際には1冊の電話帳を引くのではなく、複数のサーバに段階的に問い合わせる仕組みで動いています。

利用者のPCがWebサイトのドメイン名を入力すると、まずプロバイダなどが用意する窓口サーバであるフルサービスリゾルバに問い合わせが送られます。リゾルバは答えを知らなければ、まずインターネット全体の頂点にあたるルートサーバに尋ね、次にそのドメインの情報を管理する権威サーバへと段階的に問い合わせを重ねて、最終的にIPアドレスにたどり着きます。一度調べた結果は一定時間キャッシュされ、同じ問い合わせを毎回繰り返さずに済むようになっています。

この「段階的に問い合わせる」という仕組みを理解しておくと、第1章で学んだDNSキャッシュポイズニングが「途中の問い合わせ結果を偽の情報にすり替える攻撃」だと直感的に理解できるようになります。

AIで学ぶ

ここまでの用語は、ChatGPTやClaudeなどの生成AIに以下のプロンプトを投げかけると、比較表つきでさらに深く掘り下げて学習できます。コピーして使ってみましょう。

あなたは情報セキュリティマネジメント試験の講師です。「IT基礎知識(システム構成・DB・ネットワーク)」の範囲について、以下の用語を初学者向けに**関連づけながら**説明してください(単体の丸暗記より、用語同士のつながりを理解したほうが記憶に定着しやすく、試験本番で紛らわしい選択肢を見分ける力もつくためです)。用語同士の違いが分かる**比較表**を最後に付けてください。

【システム構成要素】集中処理、分散処理、冗長構成、負荷分散、クラスタ、クライアントサーバシステム、SaaS/PaaS/IaaS、エッジコンピューティング、仮想化、VDI、RAID、NAS、SAN、フールプルーフ、フェールセーフ、MTBF、MTTR、稼働率
【データベース】関係データベース、データベース管理システム、SQL、同時実行制御(排他制御)、障害回復(フル・差分・増分バックアップ)、データウェアハウス、ビッグデータ
【ネットワーク】LAN/WAN、ISP、TCP/IP、グローバル/プライベートIPアドレス、サブネットマスク、MACアドレス、IPv4/IPv6、ルータ、DNS、HTTP、SMTP/POP3/IMAP、DHCP、Wi-Fi、cookie、VPN、5G

技術用語は、単体で覚えるより「何のためにあるか」という文脈とセットで理解したほうが定着します。このプロンプトが関連づけながら説明させ、最後に比較表を求めているのはそのためです。役割設定→関連づけ→出力形式という型を覚えておけば、ネットワークやデータベース以外の分野でも同じように応用できます。

章末チェック

最後に、この章で学んだ知識をアウトプットして定着させましょう。全問に答えたら「答え合わせ」を押してください。

問1. 「フールプルーフ」と「フェールセーフ」の違いとして正しいものはどれか。

問2. MTBF(平均故障間隔)とMTTR(平均修理時間)の説明として正しいものはどれか。

問3. バックアップ方式のうち、直前のフルバックアップ以降に変更されたデータだけを毎回バックアップする方式(データ量は少ないが、復元時は直前のフルバックアップと最新の増分をすべて適用する必要がある)はどれか。

問4. IPv4とIPv6のアドレス空間の違いとして正しいものはどれか。

この章のまとめ

この章では、システムの構成・信頼性設計、データベースの基本操作、ネットワークの仕組みという、セキュリティ対策を支えるIT基礎知識を学びました。

次章では、プロジェクトやサービスをどう管理するかというマネジメントの知識を学びます。→ 第6章 マネジメント(プロジェクト・サービス・監査)